介護タクシーの運賃が介護報酬で充当できるといわれることについて

そもそも厚生労働省、国土交通省が認めているのは、「通院等乗降介助」または「要介護4、5で、外出前に一定の身体介護を行った場合」に、「介護タクシー」や「自家用有償旅客運送(福祉有償運送)」と連続・一体としてサービスを提供としている場合に、介護報酬を運賃や利用料の一部として充当してもよいということです。この場合に利用者は、運賃を全額自費負担とはならない場合がありますので、ちょっと安く思える場合もあります。

 

この件につきましては、われわれ訪問介護事業者が通院等乗降介助を算定する時の運賃が一般の自動認可運賃の縛りを受けず、カンパ程度の運賃設定ができることをいわれているのであれば当たりません。我々が運賃を低く設定する原資に介護報酬が使われ、そのことで利用者の確保がなされているとお考えであればとんでもない誤解です。

我々訪問介護事業者の全てではありませんが、通院等乗降介助という介護サービスを行なうために運輸事業許可を取り運行しているのです。 

 

この経緯は、そもそも介護保険制度スタート時に遡ります。

本来の「介護タクシーサービス」を実施したタクシー会社は、旅客への見守り、買い物等付添、介助等のサービスを提供するために、タクシー運転者にヘルパー資格を取得してもらいました(介護保険が始まる前です)

 

介護保険制度がスタートした際に、このタクシー会社は、訪問介護事業を始め、身体介護(通院介護)を利用して、タクシー運行+身体介護を行いました。経緯は飛ばしますが、最終的に、身体介護1時間の報酬が、タクシー1時間分の貸切料金を上回るため(当時の単価)、介護報酬の1割負担でサービスを提供しました。簡単に言えば利用者は1時間420円で、タクシー送迎+介護が受けられるので、人気のサービスとなりました。

厚生省は、運転中は運転に専念するため介護では無いとして、後からこの運用を禁止しました。(2001年3月28日付事務連絡)

 

一方、運輸省は、最初、利用者から直接運賃を収受せず、介護保険報酬から運賃を充当するのは、おかしいとしていましたが、あとから「どのような形であれ、運賃を収受しているのであれば問題ない」(自治体によるタクシー運賃補助制度などがあるため)とし、「厚生省は、介護報酬は介護サービスに対する対価としているが、タクシー運賃相当額が、事実上、事業者の収入になっていればよい」とし、「運賃が、介護報酬を上回っている場合は、差額分を利用者から収受すればよい」という見解をだしました。(2001年1月5日付)

 

その後、厚生省は、身体介護の運用を厳しくし、代わりに「通院等乗降介助」を設けたため、原則運転者兼ヘルパーの場合は、100単位となり、介護報酬がタクシー運賃を上回ることがなくなったので、身体介護の報酬を当てにしたタクシー会社系の介護事業者は撤退が増えました。

 

現在、タクシー会社系訪問介護事業者で一般的なのは、運賃-1000円=利用者負担という形態だと思いますが、ウィルでは運賃はきちんと頂戴し、介助料金のみを介護保険適用しているということです。

 

本来、運送部分の対価が無償であれば、道路運送法の対象外なので、許可又は登録は必要ないのですが、2001年の見解があるため、介護保険サービスと連続した送迎サービスは、事業者が例え通院送迎時の「運送対価」を収受していないとしても、自動的に前後の介護サービスの報酬から補填しているとみなされるために、「通院等乗降介助」又は「要介護4又は5で、一定の条件を満たす送迎」の場合は、道路運送法第4条又は第43条許可(営利法人・非営利法人)、道路運送法第79条登録(非営利法人)を求めることとなっています。

 

なお、道路運送法第43条許可は、本来会社の社員送迎などを対象とする制度であり、契約内容が月単位などのため、認可運賃制度とは別立てになっています。これを「要介護・支援認定者」は特定できるからと拡大解釈して運用されています。

 

43条許可は、認定者のみしか対象にできないので、介護保険対象外の運送サービスをできませんが、4条(限定)許可であれば、介護保険サービス外のニーズにも対応して、福祉タクシー事業を展開できます。

実際、4条(限定)許可を取った訪問介護事業所では、介護保険サービスでは「ぶらさがり許可」によるヘルパー送迎(自家用自動車使用)で低運賃にして、介護保険サービス外(認定を受けていない方や障害者の方など)は、4条許可車両で、通常の福祉タクシーとして運行される例も多いようです。

 ウィルでは一切そのようなことは行いません。

 

「介護保険介護タクシー」なる言葉については、そもそも俗語である「介護タクシー」という言葉が誤解を招くもとになっているので、一つ一つ説明していくしか無いと思います。まあ厚労省にしても国交省にしても、基本的に「介護タクシー」という用語は使用していないのですが・・・。